04 / OEE
OEE 入門
製造業の「総合設備効率」を、専門用語を最小限にして説明します。経営者以外・現場の方も対象です。
OEE とは(概要)
OEE(Overall Equipment Effectiveness / 総合設備効率)は、「その現場・その作業は、どれくらい“効いて”いたか」をひとつの数字にまとめた指標です。
工場では、機械が止まっていたり、予定より遅かったり、不良が出たりします。OEE はこれらを可動・性能・品質の3つに分けて掛け合わせます。経営者層の一部しか知らないことが多いですが、式自体はシンプルです。
挿絵 — OEE の骨格
どれか1つでも低いと、掛け算なので全体も一気に下がります。
A・P・Q は何を見ているか
挿絵 — 3つのロスの見方
可動 A
Availability。「働ける時間のうち、実際に動いていたか」。停止・待ちが多いと下がります。
性能 P
Performance。「標準時間どおりの速さで出せたか」。遅さ・チョコ停が多いと下がります。
品質 Q
Quality。「作ったうち良品はどれだけか」。不良・手直しが多いと下がります。歩留に近い感覚です。
ここでいう標準時間(標準サイクルタイム / 標準CT)は、「この品目なら1個あたり何秒でできるはず」という設計値です。実際の秒数がそれより長いと、性能が下がります。
どう計算するか(DELTA の式)
1件の作業について、ざっくり次の流れです。
- 従事時間 … 開始から終了までの時計の進み(elapsed)
- 非稼働 … その作業に付けた停止時間(段取・待ちなど)
- 実働時間 … 従事時間 − 非稼働
- A … 実働 ÷ 従事
- P … (標準CT × 生産数量)÷ 実働 ※「理想の所要時間」÷「実際に動いた時間」
- Q … (生産数量 − 不良)÷ 生産数量
- OEE … A × P × Q
挿絵 — 数字の例(イメージ)
従事 100 分のうち停止 20 分 → 実働 80 分。標準なら 60 分で終わる量を、実働 80 分で作り、不良が 5% あった場合:
0.80 × 0.75 × 0.95 ≒ 0.57。それぞれ「まあまあ」でも、積は意外と低くなります。
日報の予定外停止(会議・教育など)や、シフトの計画停止は、個別作業の A には直接入れません。作業の実力と、一日の非生産を分けて見るためです。くわしくは 作業員端末・日報 を参照。
結果的に何がわかるか
- 止まったのか、遅かったのか、不良なのか … 改善の打ち手が変わります。
- どの現場・作業・作業員が効いているか … ランキングやドリルダウンで比較できます。
- 標準時間や歩留の妥当性 … P や Q が極端なら、マスタ(標準CT)や工程そのものを見直す合図です。
- 目標との差 … ▲▼ で「どこが目標を割っているか」が一目でわかります。
良い現場と悪い現場
良い現場のサイン
- A・P・Q のバランスが取れ、特定の指標だけが極端に低くない
- 停止理由が記録され、繰り返しのロスが見える
- 標準CT が現実に近く、P が常時 200% や常時 30% にならない
- 不良が少なく、出ても原因を追える
悪い現場のサイン
- 停止を記録せず、A だけ高く見える/または逆に時計を止めたまま放置
- 待ち・段取が常態化し、可動だけが慢性的に低い
- 標準時間が古く、性能の意味が読めない
- 数量・不良の入力が雑で、品質 Q が信頼できない
挿絵 — 同じ「忙しさ」でも中身が違う
現場 A(健全)
現場 B(要改善)
止まっている時間が主因。まずは可動のロスを潰す。
優秀な作業員とは
DELTA の作業員 OEE は、「その人が関わった作業」の A×P×Q を積み上げて見ます。優秀さは次のような姿です。
- 止まらない/止まっても理由が残る … 作業中の非稼働を正しく記録し、闇雲に時計だけを延ばさない
- 標準に近い速さ … 無理な飛ばしすぎより、再現できるペース(性能 P)
- 歩留が良い … 不良を少なく、または早く検知する
- 日報の予定外停止を混ぜない … 会議・教育は日報の予定外停止へ。作業の実力と一日の非生産を分けられる人
OEE が高いだけで「いい人」とは限りません。標準CTが甘すぎる、数量が過大、停止を隠している、といった歪みも疑います。数字と現場の感触を両方見ることが大切です。
製造業における OEE の目標値
業界や工程で差はありますが、よく引用される目安は次のとおりです(設備効率の一般論)。
| 水準 | OEE の目安 | イメージ |
|---|---|---|
| ワールドクラス | おおよそ 85% 以上 | ロスが小さく、継続改善が回っている |
| 一般的な優良ライン | おおよそ 60〜70% | 改善余地はあるが運用は成立 |
| 多くの現場の出発点 | おおよそ 40〜60% | 停止・速度ロスがまだ大きいことが多い |
DELTA の規定目標は組織未設定時 80% です。自社の工程・標準時間の厳しさに合わせて、現場/作業ごとに目標を置いてください。「85% 未満=失敗」ではなく、どこのロスを先に潰すかのコンパスとして使います。